本文へスキップ

■プレスリリース 

  PDF
 2024年8月30日
 各 位
 株式会社Eサーモジェンテック
小型で、簡単に温排水パイプに装着でき、高出力が可能な、
熱電発電による空冷型自立電源システム(S1-P3)の開発・試作に成功!
 
 株式会社Eサーモジェンテック(本社:京都市、代表取締役:岡嶋 道生)は、ENEOSホールディングス株式会社(社長:宮田 知秀)との共同開発により、様々な工場から大量に排出されている150℃以下の水蒸気/熱ドレン水等の温排水用大口径パイプ状廃熱源に、簡単に装着でき、周辺環境との温度差60~80 ℃、風速2m/secで20~40W/mの熱電発電が可能な、熱水蒸気/温排水配管装着用 空冷型自立電源システム(S1-P3)(以下、空冷型自立電源システム(S1-P3)とする。)の開発・試作に成功しました。(世界初!)
 また今後の事業展開のためのマーケティング用として、弊社R&D阪大拠点内に、そのデモ機システムを設置・展示し、お客様に気軽にご覧頂けるようにしました。

【背景】
 世界的に脱炭素化に向けた動きが加速する中、温室効果ガス(GHG)排出量の削減が大きな社会課題となっています。特に、莫大な排熱のほとんどが300℃以下の低温排熱であり、この低温排熱を活用しようとする取り組みに注目が集まっています。
Eサーモジェンテックは、2021年に、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の助成を得て、この低温排熱から初めて実用可能なコスト性能比で、電気エネルギーに回収できる独自コア技術;フレキシブル熱電発電モジュール「フレキーナ®」(基本特許:第5228160号)の開発・実用化に成功し、現在、500社以上の顧客から引き合いを頂く等、大変大きな関心を集めています。
このフレキシブル熱電発電モジュール「フレキーナ®」の外観を図1に示します。

 

 

 図1 「フレキーナ🄬」の外観 

 熱電発電は、古くから研究開発されてきましたが、従来の熱電発電モジュールはセラミックス基板上に熱電素子を実装した構造が主でした。そのためパイプ状の廃熱源に対して、排熱を効率よく熱電発電モジュールに伝えることができず、特に莫大な低温排熱に対して実用的なコスト性能比での発電ができませんでした。
一方「フレキーナ®」は、フレキシブル構造で熱源パイプに密着できるため、高い熱回収効率を得ることができます。また半導体技術を活用しているため、量産により低コスト化と高信頼性が可能です。


【今回の発表内容】
 300℃以下の低温排熱源のうち今回の発表は、様々な化学製品メーカや鉄鋼メーカ等の工場から大量に排出されている150℃以下の熱水蒸気やそれを温排水とした水蒸気/熱ドレン水に注目しました。そのような熱水蒸気や温排水は、口径が20~30cmΦ等の比較的大口径の配管により様々な工場から大量に廃棄されています。
 今回図2のように、独自フレキシブル熱電発電モジュール「フレキーナ®」内蔵放熱フィンを、配管に巻き付け密着できるような発電ユニットに構成し、大口径の配管に巻き付けるだけで、簡単に、小型、低コストでWクラスの発電電力が得られる空冷型自立電源システム(S1-P3)を開発しました。
 

  

図2 空冷型自立電源システム(S1-P3)の外観図
 この自立電源システムを、図3に示すように、ENEOSの関連会社であるJX石油開発株式会社の中条油業所の温排水配管に装着し、1年間、PoC(Proof of Concept:検証実験)を実施しました。このとき熱電発電による電力を使って、監視カメラやLED照明、及び様々なIoT用センサを駆動し、通信機でそれらのデータを弊社R&D阪大拠点に送信してモニターできるように、システムを構成しました。
 その結果、温排水と周囲温度との温度差が、60~80℃、風速2m/secのとき、20~40W/mの出力が得られることを確認できました。

 


図3 JX石油開発株式会社での実証実験風景
 その後、このPoC(検証実験)で抽出した様々な課題を解決して、図4に示すような空冷型自立電源システム(S1-P3)を試作し、弊社R&D阪大拠点内にデモシステムとして設置しました。 


図4 弊社R&D阪大拠点のデモシステム
【特長】
 本発表の空冷型自立電源システム(S1-P3)は、150℃以下の水蒸気/温排水配管に簡単に装着でき、Wクラスの電力が得られるため、ケーブル敷設工事が難しかった場所にでも、簡単に監視カメラや照明等の敷設・利用が可能になります。
 また多数の無線センサを敷設しデータ収集して、工場における予兆管理や安全・安定操業を可能にするIoT用自立電源としての利用も可能です。
 なお低温排熱による発電システムとして周知のバイナリ発電に比べ、本発電システムは遥かに小さい設備投資とメンテナンスコストでの設営が可能なため、大きな優位性を誇ります。
 本空冷型自立電源システム(S1-P3)の特徴を、下記にまとめます。

 ◎ これまで廃棄していた水蒸気や温排水の配管に簡単に装着して、電力回収が可能
 ◎ 高価な電源ケーブルの敷設が不要(屋外でも簡単に電力が得られる)
 ◎ 自然空冷で動作が可能(水冷配管の敷設は不要)
 ◎ 設置数の変更(拡大・縮小)が容易で、スケーラビリティに優れる
 ◎ 小さな設備投資とメンテナンスコストでの設営が可能

【製品仕様】
 
空冷型自立電源システム(S1-P3)の仕様(屋内評価レベル)を表1に、
また電源回路構成、発電システム構成をそれぞれ図5、図6に示します。
 
  表1 配管空冷自立電源システムS1-P3仕様
配管空冷型自立電源システムS1-P3
出力  ・12V、10~20W/m(熱源と周囲温度差;60~80℃)
  (配管径267.3mmφ(250A)、
   地面接地なし、無風状態、周辺温度25℃)
用途  ・LED照明、カメラ、通信モジュール、各種センサ等
対応配管  ・水蒸気、温排水等用配管: 250A(267.3mφ)
  (ご相談により、他の口径にも対応可能です)
周辺環境  ・環境温度:-5~40℃
 ・屋内/屋外使用可能
接着方法  ・熱源配管に巻き付け装着
構成  ・「フレキーナ®」内蔵放熱フィン
 ・電源回路(12V出力)(バッテリー込み)
電源回路構成  ・DCDC電源変換回路/制御回路
 ・二次電池(標準容量;12Ah/20hr)
外形寸法  ・放熱フィン:高さ60㎜、幅60㎜(1巻)
 ・電源回路部:W135㎜×L230㎜×H40㎜(仮)
※外径に関しては変更する場合があります



図5 電源回路構成



図6 発電システム構成
【屋外環境による影響】
 屋外で使用する時は、放熱フィンを地面に接地し放熱することが可能で、冷却効果が増すため、出力を大きくできます。また通常は2m/ sec程度の風速があるため、その影響からも出力が大きくなります。
 屋内実験室での風速の影響を調査した結果を図7に示します。熱源配管温度―周辺環境温度差60℃、風速2m/secの時は、無風状態の約1.7倍の出力を得ることができました。



             (熱源配管温度―周囲温度差 60℃ 無風状態の出力を1とする)
図7 屋内実験室における風の影響調査

【今後の展開】
 Eサーモジェンテックは、本空冷型自立電源システム(S1-P3)に関して、まず様々な製造工場から排出されている150℃以下の莫大な水蒸気/熱ドレン水を回収し発電し、監視カメラや照明用やIoT電源用への活用に関心のある顧客を対象に、マーケティング活動を展開し、顧客ニーズに沿ったPoC(検証実験)の実施等を提案させて頂きます。

 また本空冷型自立電源システム(S1-P3)は、今後、温泉や地熱発電所の熱水蒸気/温排水を利用した熱電発電にも展開が期待されています。特に温泉地等山間部等の遠隔地では、電力配線敷設コスト削減や危険作業低減のため、環境発電による自立電源が求められています。本システムは、そのような電源確保が困難な地域での電力供給にも、威力を発揮すると期待されます。
 ただそのような遠隔地で稼働する発電設備では、高い信頼性と高いメンテナンス性が必須です。そのため、現在、NEDOの助成により、本システムの耐腐食性の向上と、高メンテナンス性を得るための熱電発電用バッテリーマネージメントシステム(BMS)を装備した二次電池システムの開発を推進中です。
 このようなBMSを搭載した信頼性の高い二次電池システムができれば、図8に示すように、地域単位の熱電発電による電源ユニットとして、太陽光等、他の環境発電システムやEV等の二次電池システムと組み合わせることにより、今後普及が進むとされる分散型電源システム(VPP)の重要な一翼を担うことが期待されます。

 図8 排熱を利用した地産地消のエネルギーマネジメントシステム
 なお今回は、監視カメラや照明用、あるいはIoT用のWクラスの電力を得るための自立電源として開発しましたが、更に大きな電力を得るため、発電ユニットの構成を最適化して排熱量を更に多く回収して、省エネ用としての応用展開することも可能です。今後のマーケティング活動により、様々な顧客要望を明確化し、対応していきたいと思っています。

 以上のように本発表の空冷型自立電源システム(S1-P3)は、小さな設備投資とメンテナンスコストでの設営が可能なため、今後、工場排熱回収ばかりでなく、地域経済に貢献する発電システムとしても、大きな展開が可能です。
 SDGsに対する要望が高まるなか、本空冷型自立電源システム(S1-P3)は、従来放出されていた未利用熱を有効に活用する技術のひとつとして、低炭素・循環型社会の実現に貢献すると期待されます。

記事;http://www.e-thermo.co.jp/pr20240830.pdf 

 <本件に関するお問い合わせ先>
株式会社Eサーモジェンテック R&D阪大拠点 
TEL:06-6170-5535
E-MAIL:

 

株式会社Eサーモジェンテック

【本社】
〒601-8047
京都市南区東九条下殿田町13
九条CIDビル102
TEL 075-681-7825(代表)
FAX 075-681-7830
E-mail